2011年4月25日月曜日

浪漫

これがなにか、お分かりであろうか?

そうJRAの馬券である。

何を隠そう、わたくしは生粋の競馬ファンである。

高校を卒業と同時にその世界へ入り込んで、まだ抜け出せない。

いや自ら奥へ奥へと進んでいるのである。

今日は宣伝でもよく耳にする、皐月賞の日であった。

そして今日は給料日前日でもある。 明日になれば小遣いが入る。

わたくしは財布にある今月残りの小遣いの残りを全部勝負して、何倍にもしてやろうと、鼻息荒く、競馬場に向かった。

今日の金運の占いは4位だったが、直感が冴えるとお告げがあったので、ますますその気になり、鼻息が二倍に荒くなった。

競馬場にある、いつも行く三階のレストランで、1200円も叩いて、カツカレーとアイスコーヒーを注文し、優雅に予想を始めた。

自信があったのだろう。
いつもは吉野家で安い牛丼などを食べてから、ドキドキして競馬場入りして、レストランでは、コーヒーだけを注文するのだが、この日は太っ腹だった。

予想をしていると、お爺さんが足をガクガクさせながら、乳母車のようなものを押してレストランに入ってきた。

常連さんなのであろうか、よくそんな足取りで、広い阪神競馬場の三階までやって来たものだと感心していると、わたくしの隣の席に強引に乳母車を押し付けて入ってきた。

レストランはガラガラだったのだが、どうしてもそこに座りたかったのか、定位置だったのか、分からないが、乳母車を置くスペースに困っている感じであったので、わたくしは席を移動した。

お爺さんは座りたい席を凝視していて、わたくしが移動したのも気がついてない様子であった。

余程、その席に思い入れがあるのであろう。

わたくしは移った席で順調に予想を進め、最後の追い込みにとりかかった。

その時、斜め後ろのおじさんが、なんやら叫んでいる。

ビールのおかわりをしたく、店員を呼び付けている様であった。

が…このレストランは食券購入のシステムである。

店員も苦笑いしていたが、かしこまりました!とお金を受け取り、ビールを持ってきた。

5分ほどすると、また何やら叫びだした。

今度はオツマミを注文したいみたいだった。

さすがに店員も困りましたねという表情で、渋々と注文品を運んでいた。

しかし二度あることは三度ある。

また5分くらいしたら、また何やら叫びだした。
ふと周りを見渡すと、店員が一人もいない。

いくらガラガラだとは言え、一人もいないのは、明らかに無視している感じであった。

おじさんも頑張って叫んでいたが、痺れを切らしたのか、立ち上がって、厨房の方まで行き、店員を呼び出し、自分の席まで連れていって注文していた。

おじさん… 歩けるなら、食券買ったほうが、早いのでは…。

きっとビールを飲んで、酔ってしまったから、始めに食券を購入したことを忘れてしまっていたのだろう…。

などと気が散ってしまい、あっという間に締め切りの時間になってしまい、多少悔いの残る予想になってしまった。

気がつくとおじさんはもういない。

あわてて馬券を買い、レースを見た。

結果はこの馬券の通りである。

しかし競馬ファンの方ならお分かりになるでしょう。

この馬券がいかに勇気ある馬券かが…

帰りの人混みで、悔しさのあまり、あのおじさんは、わたくしの集中力を反らすための、JRAの回し者だったのかも…とある訳無い事を考えて、責任転嫁をして、悔しさを間際らそうとした。

と、横を見ると、あの乳母車のお爺さんが、人混みの中、足をガクガクさせながらも、悠々と進んでいた。

わたくしは目を奪われた。

かっこいいな。

人のせいにしようとした、自分が小さく見えて恥ずかしかった。

このお爺さんは、誰の力も借りず、一人で自分の楽しみを続けているのだろう。

負けても勝っても楽しみは自分の中にあるのだ。

そう語っているような横顔だった。

俺もなりたい。

今日は良い一日であった。

しかし次は勝ちたいです!


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